1.PEST分析とは
外部環境は自社でコントロール不可能な「マクロ環境」と、自社である程度コントロール可能な「ミクロ環境」に分けられます。
PEST分析は、自社を取り巻くマクロ環境を分析するフレームワークです。アメリカの経済学者でマーケティング論に精通するフィリップ・コトラー氏が提唱しました。
マクロ環境をPolitics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの視点から分析することから、それぞれの頭文字をとり「PEST」と言います。
P:Politics(政治的環境要因)
国、政府による法改正や規制などを分析します。世の中全体に大きな影響を及ぼすので、企業はこれらを注視し、自社への影響を考え、事前の対策が必要になります。
・法改正
・増税
・政権交代
例えば2020年の4月から、「改正健増法」により飲食店など屋内は原則全面禁煙になりました。全席禁煙で他店舗と差別化をしていた店舗にとっては脅威になります。
E:Economy(経済的環境要因)
経済状況の変化は価格帯に大きな影響を与えます。価格の変動は企業の売上、利益に直結するので情報や変化に注視する必要があります。
・景気動向
・物価
・経済成長率
・人件費
・株価、為替、金利
2015年、すき屋は人件費上昇により牛丼(並)を60円の値上げ、2021年には原材料であるアメリカ産牛肉の価格が上昇したことでさらに50円値上げされました。このように価格競争力の強い商品は、経済状況の影響を大きく受けてしまいます。
S:Society(社会的環境要因)
社会的環境を分析することで、消費者の需要を把握する際に役に立ちます。以下が代表的な要素です。
・人口動態
・流行、世論
・世帯
・少子化、高齢化
・宗教・人口・言語
2020年より猛威を振るっているコロナウイルス。以前は花粉症や風邪の際に着けていたマスクも、外出時の必需品となる程に需要が伸びました。
T:Technology(技術的環境要因)
技術的環境は、ITなど革新的な変化をもたらす要因を分析します。企業の製品開発や広告手法だけでなく、消費者の生活の豊かさにも影響を与えます。
・IT活用
・イノベーション
・インフラ
・新技術
・特許
スマートフォンが普及したことにより、「ガラケー」と呼ばれる折り畳み式の携帯のシェアは縮小し、目にする機会もほとんどなくなりました。さらにスマートフォンでは簡単にインターネットにアクセスできるので、ユーザーは能動的な情報収集が可能となりました。
4.PEST分析の実践例
それではPEST分析の実践例を紹介します。
昨今、教師の働き方について問題視されており、これを改善するために、学校向けSaaS(Software as a Service)として校務支援ツールの導入が急がれています。
今回はこの校務支援ツールの開発におけるPEST分析を行っていきます。
Politics(政治)
・教員勤務実態調査(平成28年度)の集計で教師の勤務実態が明らかに
→文部科学省が学校における働き方改革推進
・公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和2年4月施行)
Economy(経済)
Society(社会)
・働き方への意識の高まり
・新型コロナウイルスの流行により密を避ける
・複雑化した社会に対応するため、従来の暗記型ではなく、「生きる力」を身に付けた子どもの育成が必要
=教師の負担増大
Technology(技術)
・学内インターネット、ICT機器の普及
・クラウドデータ、インターネットの活用